FC2ブログ

何者

ここのところ、ずっとYA向けの本ばかり読んでいたのですが、たまには大人の読み物を、と、以前から気になっていたこちらの作品を読んでみることに。

『何者』 (朝井リョウ 著、新潮社)
DSC07039.jpg

就職活動を通して、現代社会に生きる若者たちの今を描いた印象深い一冊。
主人公をはじめとする6人の登場人物の気持ちの揺れ動き、SNSという「仮面」の持つ負の側面、読み進めていくうちに、いつの間にか引き込まれ、自分もこの物語の登場人物の一人になってしまったかのような感覚を覚える、そんな作品でした。

大人へと成長していくにつれ、徐々に増えていく「仮面」。
家庭で、学校で、バイト先で、職場で・・・それぞれの場面に合わせた仮面を身に着け、それを巧みに演じ分けられるよう訓練を重ねていくうちに、本当の自分は「何者」なのかわからなくなってしまう。
TwitterやFacebookなどのSNSの世界は、さらにその傾向を強めてしまう危険も孕んでいるように感じます。

誰しも長所と短所があり、完璧な人間などこの世には存在しないのですが、この時代、SNSという仮面を使えば、以前より容易に「完璧な自分」を演じることが可能になり、その「もう一人の自分」に対し、周りからの肯定的な評価が加われば、自分がさも特別な人間になったかのように錯覚してしまうのも無理はありません。

しかし本来、自己肯定感とは、自分の短所をも認められるようなり、初めて得られるもの。
偽りの自己肯定感に酔いしれているうちは、本当の意味での成長はなく、心が満たされることもないのです。

自分の中にある、どろどろ、もやもやとした負の感情とどのように付き合っていくのか。
この物語の主人公のように、SNSの世界でそれを吐き出すことの危険性。
どこまでも続いていく負の感情の連鎖を断ち切ることができない心の弱さ。

この物語の最後で、主人公・拓人の就活仲間の理香が、拓人に向けて放った言葉が、強く胸に響きました。

「自分は自分にしかなれない。痛くてカッコ悪い今の自分を、理想の自分に近づけることしかできない。みんなそれをわかってるから、痛くてカッコ悪くたってがんばるんだよ。カッコ悪い姿のままあがくんだよ。」(p.264)

「拓人くんはいつも、少し距離を置いたところで私たちの戦いを眺めてる。自分はあんなカッコ悪いことをしなくたっていいはずだって、心のどこかで思ってる」(P.267)

「思ったことを残したいなら、ノートにでも書けばいいのに、それじゃ足りないんだよね。自分の名前じゃ、自分の文字じゃ、ダメなんだよね。自分じゃない誰かになれる場所がないと、もうどこにも立っていられないんだよね。」(p.270)

「私だって、ツイッターで自分の努力を実況中継していないと、立っていられない」(p.271)


子どもの頃から、周りからの評価と、本来の自分との姿に、ギャップを感じ続けていた私。
学校での成績もそこそこ良く、これといった反抗期もない、いわゆる「優等生」としての自分を演じ続けてきた学生時代。
その後就いた教職の世界からも、結婚を機に離れることとなり、初めての土地でゼロからのスタート。
人生で初めての挫折を経験しました。
スローペースで要領が悪く、体力もなくて全力疾走もできない「痛くてカッコ悪い今の自分」を、少しでも理想の自分に近づけられるよう、ただひたすらにもがき続けてきたこの10年間。
絵本と自然、子どもたち、応援してくれる家族やたくさんの方々との素敵なご縁により、少しずつ道も見えてきて、今の自分はここに立っていられるのだなあと本当に感謝の気持ちです。

この作品を読み、改めてこれまでの自分の姿を振り返るとともに、日々、大人へと成長していく子どもたちにも、「カッコ悪くたって大丈夫だよ。」と、声をかけ続けていきたいと強く思いました。

また、この作品をきっかけに、以前読んだ、河合隼雄さんの著書、『子どもと悪』(岩波書店)の裏表紙に掲載されていた谷川俊太郎さんの詩を思い出し、久しぶりに読み直してみることに。


「うそはついていないけど

わたしはほほえんでだまってる

ほんとのきもちをだれにもいわずに

いいこだから わたしはわるいこ」(一部引用)


「いい子」は往々にして「大人にとって都合の『いい子』」に過ぎないことが多く、「いい子」の部分をだけを誉め、肯定することは、その子に「いい子」の仮面を強要することにもなりかねません。

一般的に、子どもは善なる存在、と思われがちですが、大人同様、子どもにだって「悪」の部分は存在するもの。
善と悪、長所と短所の両方を認め、葛藤しながら成長していく子どもの姿を見守りつつ、大人もともに成長していくことで、互いの自己肯定感を高めることができるように感じます。


どちらの作品も、日々、理想と現実の狭間でもやもやとした感情を抱え、過ごしている方に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

☆まどかめ文庫Facebookページはこちら☆
https://www.facebook.com/madokame71
絵本の紹介に加え、日々の出来事などを綴っています。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

まどかめ

Author:まどかめ
田舎暮らしを楽しみつつ、日々、親子でマイペース&スローペースに絵本ライフを満喫中。

趣味:読書・歌・お絵描き・芸術鑑賞など。子ども文化・心理学なども学び中。

活動:図書館での絵本の紹介、おはなし会、幼稚園・小・中学校の移動図書の選書、朝読、おはなし会、育児サークル・未就学児向けの親子絵本講座、おはなし会など



まどかめ文庫
Facebookページはこちら



まどかめ文庫
twitterはこちら

まどかめ文庫 Twitter
赤ちゃん絵本
最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
検索フォーム
リンク
ランキング参加中
FC2 Blog Rankingに参加中